宗教への対応


「仏教」は多くの宗派に分かれており、葬儀社によっては対応できない場合もあります。
宗派の基礎知識から、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教といった宗教のお葬式について解説したいと思います。
そもそも「仏教」とは?

仏教は、インドの釈迦を開祖とする宗教で、その歴史は紀元前5世紀に遡ります。
日本では聖徳太子が摂政になった“飛鳥時代”に広まりましたが、「宗派」が生まれたのは平安時代ごろと言われています。
最澄(さいちょう)を開祖とする天台宗や、空海(くうかい)の真言宗など、各々がそれぞれ別の思想へと変化したことで、元々は1つであったものがいくつもの宗派へと分かれていったのです。
仏教の種類
日本仏教に於ける主な宗派には、天台宗、真言宗、浄土宗、日蓮宗、浄土真宗、法相宗、華厳宗、律宗、時宗、融通念仏宗、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗の計13宗があります。
それぞれ本尊(信仰の対象)や経典、修行の方法、成仏への考え方等が大きく異なりますので、まずは故人の宗派をしっかりと把握しなければなりません。
無宗教が多い日本では“自分の宗派が分からない”という方も多く存在していますが、万が一異なる宗派の方式で葬儀を行ったり戒名を与えられたりした場合、お墓を管理する寺院によっては納骨を断られてしまうケースもあります。
必ず親族やお墓を管理する寺院に確認するようにしてください。
仏教以外の宗教

日本では憲法に於いて「信教の自由」が認められており、信仰によって差別されたり、争いが起こったりすることはほとんどありません。
そのため、キリスト教やイスラム教、ヒンズー教、その他新興宗教といった様々な宗教が混在しており、お葬式の形も様々です。
各宗教の葬儀の様子や流れについて解説致します。
キリスト教のお葬式

仏教と同じくキリスト教も通夜(前夜祭)⇒葬儀⇒納骨という流れで執り行われます。
キリスト教にも宗派(プロテスタント・カトリック等)があり、式の内容には若干違いがありますが、流れについてはほとんど変わりません。
なお、キリスト教の中には「人格の永久性と将来の復活」という教えがあるため、肉体が残る“土葬”が一般的でしたが、衛生面の問題や科学の高度化による信仰の変化等により、世界的に“火葬”が用いられるようになっています。
神以外に祈ることは禁忌とされているため、お焼香等は行わず、献花を故人へ送るのが作法とされています。
イスラム教のお葬式

仏教やキリスト教に比べ、イスラム教のお葬式は非常にシンプルです。
祭壇には遺影は飾らず、棺とその周りに供花が飾られるだけの質素なものであり、遺族の挨拶等もありません。
なお、イスラム教では死者はアッラーの審判によって再び蘇ると教えられており、24時間以内に埋葬(土葬)するのが教義となっています。
土葬が原則として禁止されている日本ですが、一部土葬が可能な墓地もありますので葬儀社に事前に相談しておきましょう。
ヒンズー教のお葬式

ヒンズー教(ヒンドゥー教)はインドを中心に9憶人以上の信仰者を持つ宗教です。
日本にも多くの信仰者がおり、対応する葬儀社が多く存在しています。
インドでは遺体を火葬したのちガンジス川に遺骨を撒く方式がほとんどですが、日本の場合は散骨に特別な許可が居るため、故人や遺族の意向に沿えない可能性も多いです。
そのため、遺族(親)が仏教徒・故人(子)がヒンズー教といったケースであれば家族のお墓に入る場合もありますし、火葬を日本で行った後にインド領事館から「遺骨証明書」を受け、ガンジス川へ散骨するというケースもあります。
法的な手続きや専門知識が必要になりますので、対応する葬儀社を探さねばなりません。
家族葬は宗教葬に対応している?

家族葬は、大手葬儀社がプランの1つとして提案しているケースと、比較的小規模な葬儀社が専門で行っているケースがあります。
両者共に「ご遺体の移送」「納棺」「斎場及び火葬の手配」は葬儀社に於いて行いますが、お経を読む・戒名を付ける等は寺院の役割となり、葬儀社側が行うわけではありません。
つまり、基本的にはどの葬儀社も全ての宗派に対応しており、宗教の心配はしなくても問題ないでしょう。
宗教によっては要事前確認
新興宗教と呼ばれるものや、前述した「ヒンドゥー教」等の場合には、葬儀社側も特別な知識や手続が必要になります。納棺や斎場の飾りつけは葬儀社が担当しますので、当該宗教に対応する葬具が用意出来ない場合があるためです。
また、土葬や散骨は原則として日本では認められておりませんので、海外へ遺骨を運ぶ場合には遺骨証明書や埋葬許可証等を領事館から受ける必要があります。
弁護士や行政書士等の専門家を紹介して貰えるかも事前に相談するようにしてください。