お墓に関する基礎知識


お墓には独自の習慣があり、一般的な常識と大きく異なるケースがあります。
また、お墓を持たない「永代供養」、木を墓標として用いる「樹木葬」といったように、お墓のスタイルは歴史と共に変化しつつあります。
当ページでは現代に於けるお墓のスタイルやトラブル、法的手続といった基礎知識についてまとめておりますので、是非ご参考ください。
永代使用権が不要のお墓
墓地の使用には「永代使用権」が必要になります。
こちらは文字通り“墓地を使用する権利”になりますが、似て非なるものに「永代供養」という供養方法があります。
永代使用と永代供養の違い

永代使用が墓地の使用権に対し、永代供養は寺内の使用権という位置づけになります。
具体的には、寺内に仏壇を設置し、そちらに遺骨及び位牌を納めた上で、当該寺院の僧侶が供養を行ってくれる供養方法です。
仏壇の掃除や供え物の交換等は寺院側が行うため、遠方で中々手入れが出来ないといったケースにマッチしています。
樹木葬という選択肢

永代供養にはいくつかの種類がありますが、その中の1つに「樹木葬」という供養方法があります。こちらは墓石の中に遺骨を納めるのではなく、墓地に遺骨を埋葬した上で樹木を植え、当該樹木を墓標として弔う方法です。
全国的にまだ少ないお墓のスタイルですが、土地が少ない上に単身世帯が多い都市部において今後需要が伸びる事が予想されています。
お墓トラブルに要注意

お墓に関するトラブルは、「親族間によるもの」「購入時の取引内容によるもの」の2つに大分されます。
親族間によるトラブル

最も多いのが、夫婦間によるトラブルです。
現在の戸籍制度では婚姻により夫・妻いずれかが筆頭者となり、その筆頭者が持つお墓に入るのが原則となっています。
しかしながら、不仲・宗教上の理由・アイデンティティ等から「相手の家のお墓に入りたくない」というケースが多くなっています。
こちらに関しては法律上の取り決めがありませんので、相手方の言い分を飲んで別々のお墓に入る又は同じお墓に入るように説得する、のいずれかで対応する他ありません。
しっかりと話し合い、お互いが納得できる形で結論を出すようにしましょう。
販売に関するトラブル

お墓は決して安い買い物ではありません。
墓石が50~100万円、都市部の永代使用権が100~200万円と、非常に高額です。
さらに、年配の方の購入者が多いため、訪問販売や相場を大きく超えた契約等、悪徳商法の温床になることも多い商品と言えます。
墓石の購入は必ず信頼出来る販売店や会社で行うようにしましょう。
なお、寺院から石屋を指定されてしまい好きなデザインの物が用意出来なかった、寄付(檀家になるよう)を求められた、墓石の大きさが対応していない等、寺院側とトラブルになってしまうこともあります。
お墓を建てる際は“販売店”“寺院(墓地の権利者)”の双方に気を配るようにしてください。
お墓の引っ越しについて
お墓を引っ越すことを「改葬」といいます。
・お墓までの距離が遠い
・宗教が変わった
・家を引っ越すため管理維持が難しい
・寺院とトラブルになった
・区画整理が行われた。
など、改葬の理由は様々ですが、供養のスタイルや思考が変化しつつある日本に於いて今や改葬は当たり前となっています。
改装の流れと費用
改葬は「墓じまい(撤去)」⇒「搬送」⇒「設置(寺院との契約)」という流れを採ります。
墓石には魂が宿っていると考えられているため、まずは“墓じまい”によって墓石を元の石に戻す作業を行います。
この際に僧侶からの読経があるため寺院へお布施を支払いますが、さらに檀家になっている場合にはこちらを抜けるための料金(離檀料)も掛かる点に注意が必要です。
こちらが終われば、元の墓石を新しい墓地へと搬送(利用する場合のみ)し、設置工事を行い完了です。
なお、搬送料として10~30万円(距離により変動)ほど掛かり、さらには新たな墓地の権利者に永代使用料を支払う必要があります。
売却は可能?

永代使用権は当該土地を利用出来る権利(「所有権」「賃借権」「地上権」等)ですので、一見すると第三者に権利のみを売却できるようにも思えます。
しかしながら、永代使用権という権利は民法上どこにも存在せず習慣によって生まれた特殊な権利であると解されているため、契約内容や習慣に従うしかありません。
つまり、結論から言いますと寺院や墓地管理者側との合意があれば第三者への売却可能ですが、永代使用契約ではこちらを“不可”とする条項が含まれていれば譲渡は不可という事になります。
改葬の手続
改葬を行う際には以下の手続が必要です。
【まとめ】
手続名称 | 発行元 |
---|---|
①埋葬証明書(納骨証明書) | 改葬元の墓地管理者 |
②受入証明書 | 改葬先の墓地管理者 |
③改葬許可証 | 改葬先の市区町村 |
【手順】
①…元の墓地管理者に改葬する遺骨の埋葬証明書を請求します。
こちらは現在納骨されている全員分の枚数が必要になるため、時間が掛かる可能性がある点に注意しましょう。
②…改葬先の墓地管理者から受入証明書(永代供養証明書)を発行してもらいます。
③…所定の申請書に①②の書類を添付した上で改葬先(引っ越し先)の市区町村役場に提出し、改葬許可証を発行して貰います。
以上が改葬(お墓の引っ越し)に於ける行政手続になります。
行政書士に代行を行うという手もありますが、5~10万円程の報酬が発生してしまいますので、まずはご自身でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
手続自体は非常に簡単ですので、是非お試しください。