いまさら聞けない!「遺言」とは?

ワープロで作成された遺書 ワープロで作成された遺書

「遺言」や「相続」という言葉は知っていても、正確に理解をしている方は数少ないのではないでしょうか。
“遺言は誰でもできるの?”
“遺言があった場合の対処方法は?”
“どのような遺言があるのか”
といった遺言の基礎知識について分かりやすく解説いたします。

遺言は故人の最期のお願い

遺言で故人の思いをくみ取ることが大切

遺言(いごん・ゆいごん)は、生前に自身の財産をどのように分けるのか、どのように使ってもらうのかを記した書類又は言葉のことをいいます。
遺言者の死後に執行されるため偽造や隠ぺいといった被害に遭いやすくなっており、民法で厳格にルールが定められています。
なお、“遺産分割”に目がいってしまいがちですが、遺言では「お葬式の方法」や「お葬式の資金をどこから出すのか」等を決めておくこともありますので、葬儀の前に必ず確認しておくようにしましょう。

遺言の種類

民法では、相続される人のことを被相続人、財産を引き継ぐ人のことを相続人と呼びます。
相続人はもちろん、血のつながりのない第三者に遺産をあげたり特定の団体に寄付をしたりといった遺言も可能ですので、相続に於いて遺言は重要な役割を果たしていると言えるでしょう。遺言として法的に認められるにはいくつかの要件を備える必要がありますので、まずはこれらの「種類」「要件」について解説したいと思います。

自筆証書遺言
直筆で遺書を書く人

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)とは、文字通り自身で全文を自署して作成する遺言です。「自署すること」が要件なので、代筆やパソコンでの作成は認められません。
もっとも簡単に行える遺言方式と言えますが、見つけた際には必ず家庭裁判所にて「検認手続」を経る必要があります。

公正証書遺言
公正証書遺書には公証人が必要

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)とは、公証人の前で自身の遺言を読み上げ、それを公正証書文書として遺す方式の遺言です。したがって、自署の必要はありませんが、遺言者の意思がはっきりとしていなければなりません。なお、遺言が正式なものであることを証明するために、証人が2人必要になります。

秘密証書遺言
秘密証書遺書の特徴とは

秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)とは、自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴を合わせた形の遺言です。自署以外はワープロ打ちでも可、内容を誰にも知られずに作成が可能という点が前2項の遺言とは異なります。作成した遺言書は証人2人の立ち合いのもとで公証人が公正文書とすることで完成しますが、内容については関知しませんので、法的に認められない可能性もあります。

遺言は無視しても平気?

結論から申し上げますと、相続人間で協議を行うことにより、遺言とは別の財産分与をしても問題ありません。(※相続人以外の第三者に財産を渡す場合を除く)
したがって遺族(相続人)の合意が得られれば故人の遺志に反した葬儀をあげても差し支えないのですが、遺言は故人の最後の希望ですので、遵守することが望ましいでしょう。
余程の事情が無い限り、遺言通りの葬儀を執り行うのがベターです。

遺言にまつわるトラブル

葬儀でトラブルに巻き込まれ頭を抱える男性

遺言の内容によっては親族間で“金銭トラブル”や“不仲に発展”といった事態に発展する可能性は十分に考えられます。また、遺言には以下のようなトラブルが起こることもありますので、注意が必要です。

後から見つかったケース

戸棚の中から遺書を発見した様子

遺産分割が無事終わったにも拘わらず、後から遺言が見つかり大騒ぎとなってしまうことがあります。遺産は再度分割することが可能ですが、万が一葬儀の方法等の希望が記載されていた場合、再度お葬式をあげることは難しいです。可能であれば生前に遺言の有無を確かめておくことが望ましいでしょう。
なお、不動産等につきましては登記手続が既に完了してしまったり、分割が難しかったりと再度協議を行うことが困難なケースもあります。

改ざん・隠ぺい

遺書の改ざんを行うイメージ画像

自身に都合の悪い内容が書かれていた場合、見つけた方が隠蔽又は改ざんしてしまうというケースがあります。もちろんこれは絶対にしてはいけない行為なのですが、本人が黙っていれば発覚することがまずありませんので、意外にもよくあるトラブルと言えるでしょう。これらの行為を行うと相続人としての資格を失い(相続欠格)、財産を相続することができません。

葬儀における遺言の重要性

葬儀について話し合う夫婦

「葬儀は家族のみで」
「こんな葬儀にして欲しい!」
「宗教を厳格に守った葬儀を」
など、葬儀に関する希望はそれぞれあるかと思います。
前述した通り、遺言は死にゆく人の最後の希望であり、守る義務と義理があります。
もしも遺言で葬儀方法の指定があった場合には、極力希望に沿う形で執り行いましょう。
故人と遺族双方が納得できる形でエンディングを迎えられることが重要です。