海などへの散骨は可能?


「生まれ育った町の海に骨を撒いてもらいたい」
「ガンジス川に散骨して欲しい」
といった故人の希望に沿うことは可能なのでしょうか?
海や山その他特定の場所に散骨する場合の法律上の問題や可否について解説します。
「散骨」とは
故人の遺骨を特定の場所に撒くことを「散骨」と言います。
「生前海が大好きだった」等の“故人の希望”によるものがほとんどですが、宗教上の理由で散骨を選ばざるを得ないケースもあります。
また、後述しますが日本では土葬や散骨を原則として認められておりませんので、特定の場所に散骨したい場合には特別な許可を取得せねばなりません。
なお、散骨には以下の場所が多く選ばれています。
海への散骨

海は地球上でもっとも大きな「自然」です。海が好きといった理由だけではなく、“自然に還りたい”という思いから海への散骨を望む方も多くなっています。ただし、地方自治体によっては海への散骨を禁止している場合がありますので注意が必要です。
山への散骨

登山が好きだった方の場合ですと、生前よく登っていた山への散骨を望まれるケースがあるようです。しかしながら、山は原則として「誰かの所有地」になりますので、勝手に散骨することができません。必ず所有者を調べ、許可を取ってから行うようにしてください。
川への散骨

川は、生活用水をはじめ、魚やエビといった食料となる生き物が多数存在している、災害時の避難地になる等、私達の生活に様々な面で関係しています。海外には川を神聖なものとして信仰の対象になっている国も存在しています。例えば、インドのヒンズー教(ヒンドゥー教)はお墓を持たないため、火葬した後にガンジス川に散骨するのが一般的です。
法律上の取り扱い

映画やドラマでも良く目にする「散骨」ですが、法律的には可能なのでしょうか。
実は、散骨を禁止する法律は今のところ存在しておらず、各都道府県や市区町村の「条例」による規制しか存在していないのが現状です。例えば、北海道の長沼町では2005年に散骨を規制する条例を制定しているため、同町内で散骨を行うことができません。
また、埼玉県の秩父市や静岡県の熱海市も同様に散骨に関する条例がありますので、散骨は違反となります。
散骨する際の注意
遺骨のことを法律上「焼骨」と呼びます。
さらに、焼骨は「墓地、埋葬に関する法律(以下「埋葬法」といいます。)」によって、埋葬方法や納骨場所を厳格に規制しています。
(墓地、埋葬等に関する法律・第4条)
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
つまり、散骨は「埋蔵」には当たらないので、埋葬法の規制には掛からないというわけです。
ただし、刑法には以下のような条文も存在します。
(刑法・第190条)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
条文内にはっきりと「遺骨」と明記されていますので、素直に読み解くと違法に当たるようにも思えます。一体、散骨は法律上どのような扱いとなるのでしょうか。
死体遺棄には当たらない

公式による発表や判例は今のところありませんが、遺骨を砕き「粉上」にしたものを散骨する行為は“死体遺棄罪には該当しない”と考えられています。
故人や遺族には「供養の方法」についても一定の自由があると考えられている為です。
ただし、骨の形状を保ったまま私有地やゴミ捨て場等に捨ててしまうといった行為は「供養」には当たりませんし、他の人に多大な迷惑を掛けてしまいますので、違法となる可能性があります。配偶者の遺骨を駅のコインロッカーに遺棄したことで、警察は夫を死体遺棄容疑で逮捕した事例もありますので、くれぐれも注意が必要です。
散骨してはいけない場所

散骨は法律で禁止はされていませんが、どこで行っても良いわけではありません。
例えば、生活用水が通る「川」や、飲料水になる「ダム」等は、人々の健康を害する恐れがあるため行ってはいけません。また、人の土地や建物(私有地)に散骨するのは、当該不動産の所有者に不快感を与える可能性がありますので絶対にやめましょう。